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ブックイベントに行ってみた!

ブックイベントに行ってみた!『かわいいウルフ』トークイベント 自分ひとりの部屋で「書いて生きる」私たち

〈イベント概要〉
『かわいいウルフ』トークイベント 自分ひとりの部屋で「書いて生きる」私たち
日時 2021年5月2日(日) 19:00~20:30
会場 本屋 生活綴方 ※会場参加/オンライン配信
登壇者(敬称略)
小澤みゆき(『かわいいウルフ』編著者)、水原涼(『かわいいウルフ』共著者、小説家)、熱海凌(『かわいいウルフ』共著者、作家、ジャグラー)
イベント詳細 https://kwaiiuruhu.peatix.com/

 こんにちは。本が好き!レビュアーのタカラ~ムこと佐野隆広です。「ブックイベントに行ってみた!」第10回は、「本屋・生活綴方」で開催された「『かわいいウルフ』トークイベント 自分ひとりの部屋で「書いて生きる」私たち」のレポートです。「本屋・生活綴方」は、東急東横線の妙蓮寺駅から徒歩2分の商店街にあります。斜向かいには石堂書店という本屋さんがあり、街の風景に溶け込んだお店です。

 
本屋・生活綴方外観

このイベントは、2019年の文学フリマ東京で販売されて評判となった同人誌「かわいいウルフ」が、亜紀書房から商業出版されたことを記念して開催されました。編著者の小澤みゆきさん、共著者の水原涼さん、熱海凌さんが登壇され、熱海さんが進行役を務めました。

左から、熱海凌さん、小澤みゆきさん、水原涼さん

登壇者のプロフィールは、こちら

はじまりは同人誌から


右『かわいいウルフ』(亜紀書房)、左『震える虹彩』(水原涼、安田和弘/私家版)

まずは、『かわいいウルフ』の制作経緯から。

小澤:『かわいいウルフ』は、2年前の文学フリマ東京で発売しました。私がヴァージニア・ウルフのファンで、彼女の作品の紹介やいろいろな方が書いた感想文を集めた同人誌を作りたいというモチベーションで作ったものです。多くの方に読んでいただき、本屋さんでも扱っていただいて、その中で亜紀書房さんから今回書籍化されました。亜紀書房版では加筆や修正もしていますが、あえて同人誌ノリを残したりもしてします。

ヴァージニア・ウルフの入門書として最適な1冊

書籍:かわいいウルフ
(小澤みゆき / 亜紀書房)

 

「ウルフはかわいい」という観点



水原:「ウルフはかわいい」という新しい観点から読み解くことで、「かわいい」を多義的な言葉として使っている感覚がありました。「かわいい」は揶揄されがちな言葉ですが、それをウルフに対して多義的な意味で使ったのは、価値観に対するオルタナティブでもあるなと思います。


小澤:なぜこのタイトルなのかと聞かれるのですが、言葉が並んだときにひっかかるものがあるかなと思ったことと、もうひとつは私がウルフを読んでいく中で、かっこよかったり、シリアスだったりといろいろな顔を持っているけれど、どこかチャーミングさがあるとも思っていて、それをひと言で表すなら「かわいい」かなと思ってつけました。


「かわいいウルフ」は、小野正嗣さんや川上未映子さんといった方々からも高く評価されました。 そのことを質問コーナーで聞かれると、3人は口を揃えて「ここまで届いたのかと嬉しかった」と話していました。 「かわいい」という言葉を多義的に使ってウルフを表現したことで、解釈に新しさが加わり、注目を集めることになったのではないでしょうか。

 

働くことと書くことの両立、その影響

仕事をしながら創作活動を続けている3人。どのように両立させているのか、また仕事が創作活動にどう影響しているのでしょうか。三者三様の「書いて生きる」ことについて語りました。


小澤:仕事はしっかり集中して、夕方から夜の時間に同人活動や執筆をしています。寝る時間を削ったり、土日に少しだけ書いたりみたいな波があったりして、生活している自分と働いている自分と制作している自分で必死にバトンを繋いでいる感じです。

水原:書く自分を中心に置くために生活をどう組み立てるかを考えながらやっています。両立がすごく難しいです。朝早く起きて書いていますが、家を出るまでの全てを執筆にあてられるわけではなくて、そこのバランスの取り方がすごく難しい。書く私と生活する私のバランスを取ることを意識しています。

熱海:社会人3年目頃からジャグリングをまたやりだして、そこから両立がしやすくなりました。ジャグリングは、脱力するのが大事で、制作や仕事は力んだり気を張ったりを求められるので、ストレッチする時間が大事なんだという感じがあります。

熱海:今回本(『潜在性のけもの』)を作るときに、いろいろな人に頼まないといけないことがあって。学生の頃だったらそこで挫折していたかもしれませんが、昼の仕事で忙しい医療機関の人にいろいろと頼む経験をしていたことで乗り越えられたというところがあります。

 


『潜在性のけもの』(熱海凌)BOOTHにて発売中


小澤:昼の仕事では、仕事の割り振りをしたり未解決タスクの締切を延ばしたり、といったタスク管理が多いです。それが本を作ることにも影響していて、進行管理を明確にしないと気が済まない癖がついてきています。昼の仕事は出版とは全然違うけど、本の仕事に活かしたいなと思っています。

水原:図書館で働いていて、利用者を見ながら「こういう人がいるのだな」とか「こういう本が存在するんだ」とか知ることが多いです。仕事中に触れたものについて、もう少し掘り下げてみる習慣を身につけて、それは小説に活せるかもしれないし活かせないかもしれないけど、好奇心を張り巡らせ続けることを常にやっているところです。

仕事と制作のバランスについては、それそれに苦労があり、両立の難しさを感じているようです。ただ、昼の仕事が創作活動に良い影響を与えているところもあることが3人の話から伝わってきました。

終わりに

仕事と両立しながら創作することの苦労や楽しさが十分に伝わるイベントでした。 久しぶりの会場参加イベントでしたが、とても楽しく過ごせました。登壇した小澤みゆきさん、水原涼さん、熱海凌さんと「本屋・生活綴方」スタッフの皆様のおかげです。ありがとうございました!

 

■参考
本屋・生活綴方 https://tsudurikata.life/
同人プロジェクト「作家の手帖」 https://writer-life-committee.github.io/authors-note/
※小澤さんが「いぬのせなか座」の笠井康平氏と現在取り組んでいる共同プロジェクト
熱海凌『潜在性のけもの』 https://booth.pm/ja/items/2935573

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著者略歴

  1. 佐野隆広(タカラ~ム)

    本が好き!レビュアー(本が好き!レビュアー名:タカラ~ム)。はじめての海外文学フェアスタッフ。間借り本屋「タカラ~ムの本棚」店主
    11月から、はじめての海外文学vol.6がはじまりました。

    はじめての海外文学 公式サイト
    https://hajimetenokaigaibungaku.jimdofree.com/

    はじめての海外文学vol.6応援読書会(オンライン読書会)
    https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no395/index.html?latest=20

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