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monthly bookreview ranking

今月の1位は、『折りたたみ北京』の作者・郝景芳による長編小説『1984年に生まれて』 (中央公論新社)

本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2021年1月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2021年1月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)

 

1位
1984年に生まれて
書籍:1984年に生まれて (単行本)
(郝景芳、櫻庭ゆみ子/中央公論新社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:38
書評掲載日:2021-01-11 05:30:04
書評URL: https://www.honzuki.jp/book/293700/review/256079/

いつかどこかに行けばそこで自由が見つかるものだと思っていた。同時にずっと自問し続けていた。この世界にはいったい自分自身の考えというものなどあるのだろうかと。

ヒューゴー賞を受賞したあの『折りたたみ北京』の作者で、白水社から出た短篇集も読み応えたっぷりだった郝景芳による長編小説がついに翻訳刊行された。 これはもう、なんとしても読まねばならないといそいそと手にしたものの、帯にある「自伝体小説」の言葉にしばし戸惑う。
[物事のディティールは服の上に身につける帽子や帯にすぎず、その事柄に対してどう感じるかということこそが服の下に隠された身体そのものなのです。]
自伝という形をとったフィクションという意味なのだというこの言葉を、著者はあとがきでこう説明する。
どうやら、その時代、その年齢だった時に自身が感じたことや経験に、別の衣をまとわせて、フィクションとして描くという手法のことらしい。…続きを読む

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2位
JR上野駅公園口
書籍:JR上野駅公園口
(柳美里/河出書房新社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:36
書評掲載日:2021-01-15 20:45:24
書評URL: https://www.honzuki.jp/book/293601/review/256631/

昭和と平成の果てに。

全米図書賞(翻訳部門)受賞で話題となった本。
日本での出版は2014年で、既に文庫化もされている。
上野駅は昔から、東北・北関東地方の人々にとって、東京の玄関口となってきた駅である。石川啄木が「ふるさとの訛りなつかし」と歌った停車場はここなのだ。 その周辺は、敗戦後には浮浪児、現代ではホームレスと、行き場を失った人が集う場でもある。単に交通の便のためか、また少しでもふるさとの気配を感じるためか、上野恩賜公園のホームレスには東北出身者が多いのだという。…続きを読む

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3位
大きな鳥にさらわれないよう
書籍:大きな鳥にさらわれないよう
(川上弘美/講談社)
レビュアー:風竜胆さん 得票数:33
書評掲載日:2021-01-09 09:40:29
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/237479/review/256355/

ゆったり衰退していく人類の歴史・・・

今日は湯浴みにゆきましょう(p.7)
 本作はこのような書き出しで始まる。こんな記述からは、日常の風景を描いた作品だと思いそうになるが、読者はすぐに自分の想像が間違っていたことに気づく。この作品が描くのは遠い遠い未来の世界。…続きを読む

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4位
娘を呑んだ道 (小学館文庫)【Kindle】
書籍:娘を呑んだ道 (小学館文庫)【Kindle】
(スティーナ・ジャクソン、田口俊樹/小学館)
レビュアー:ことなみさん 得票数:31
書評掲載日:2021-01-18 23:19:37
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/294095/review/256771/

立て続けに娘たちの失踪事件を読んだ。立て続けと思ったが、ミステリのテーマでは珍しくないとも思い返した。娘はどこへなぜ消えた? それがミステリだ。

17歳の美しい娘が消えた。レレ(レナード・グスタフソン、数学教師)はアルバイトに行く娘リナをバス停まで送っていった。そのまま娘は帰ってこなかった。
絶えずその時のことを思い返す、なぜバスに乗るまで見守っていなかったのか。何度妻にも責められ悲嘆にくれたことか。レレは娘を見つけ出すという目的に向かって、ひたすら車を走らせ続けることしかできない。
妻は出て行き家庭は破綻した。悲しみと後悔は心の底に固まって、毎夜毎夜車を走らせることで何とか持ちこたえている。…続きを読む

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5位
デトロイト美術館の奇跡
書籍:デトロイト美術館の奇跡 (原田マハ/新潮社)
レビュアー:DBさん 得票数:30
書評掲載日:2021-01-08 19:39:52
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/285460/review/256245/

デトロイト美術館をめぐる話

原田マハの作品は『ジヴェルニーの食卓』と『サロメ』を読んだことがある。 どちらも好きな絵画を題材にしていたので手に取ったが、小説としてはあまり印象に残っていなかった。
本作はデトロイト美術館DIAを舞台にした話ですが、実話をもとにした話だからか印象に残るものがあった。表紙になっているセザンヌが夫人のオルタンスを描いた「マダム・セザンヌ」を中心にした四つの話で構成されている。…続きを読む

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5位
量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突
書籍:量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突
(クマール,マンジット、薫,青木/新潮社)
レビュアー:三太郎さん 得票数:30
書評掲載日:2021-01-10 11:23:39
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/288076/review/256275/ 

量子力学の創始者であるニールス・ボーアとアインシュタインとの「物理的実在とな何か」をめぐる論争が後半の主題だ。二人は「ルビコン川」を渡った人と渡れなかった人のように対比されるが、本当のところは・・・

先週物理学を変えた二人の男――ファラデー,マクスウェル,場の発見 をレビューしたので、その勢いで今週はボーアとアインシュタインの対決を描いたこの本を取り挙げます。
でも正直に言えば、量子力学の発展に貢献したのは主にボーアの方で、アインシュタインは脇役に過ぎません。アインシュタインの名前が先に出るのは、彼が超有名人だったからかな。とはいえアインシュタインはマックスウェルが亡くなった年に生まれて、ニートン力学に引導を渡した人物で、ニールス・ボーアの起こした量子革命にはなくてはならない人ではありました。…続きを読む

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5位
白の闇 新装版
書籍:白の闇 新装版
(ジョゼ・サラマーゴ/日本放送出版協会)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:30
書評掲載日:2021-01-11 20:12:22
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/28686/review/256488/

ある日とつぜん、目が見えなくなる。その病気は伝染するらしい。患者は隔離収容された。医者も看護人もいない。まっ白な闇の中で、見えなくなった人たちの、生き延びるための闘いが始まる……

物語は、信号の色から始まる。黄色。ドライバーは、加速する。そして赤、停止。
歩行者信号が青になる。歩き出す歩行者たち。
赤信号が青に変わり、車がいっせいに動き出す。
その中で一台だけ、動かない、いや動けない車があった。
ドライバーの目が、とつぜん見えなくなったのだ。…続きを読む

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5位

書籍:昭和二十年夏、僕は兵士だった
(梯久美子/角川書店(角川グループパブリッシング))
レビュアー:michakoさん 得票数:30
書評掲載日:2021-01-20 18:34:24
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/26466/review/256855/
 

あの頃戦場にいた彼ら。60年以上の歳月が流れそれぞれの道で第一人者となっている彼らが当時を振り返り語る。

終戦直前昭和二十年の夏。
この苦しい戦争が間もなく終わるということを知る事もなく戦場に立っていた20歳前後の若者たち。
生還した彼らに60年以上の年月が流れ、現在それぞれの分野で第一人者となっている5人に梯久美子さんがインタビューする。…続きを読む

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5位
日本奥地紀行
書籍:日本奥地紀行
(イザベラバード/平凡社)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:30
書評掲載日:2021-01-03 07:22:56
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/1979/review/255159/
   

1878年の東北、北海道を旅行家イザベラ・バードは五ヶ月かけて旅した。

1878年五月の末に、旅行家イザベラ・バードは英国から日本にやってきた。そして、通訳兼召使として伊藤という18歳の青年を雇い、五ヶ月かけて東北、北海道を旅した。 イギリス人にとって、そのころの日本って、まだまだ未開地というイメージだったのではないだろうか。…続きを読む

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5位
学術書を読む
書籍:学術書を読む
(鈴木哲也/京都大学学術出版会)
レビュアー:休蔵さん 得票数:30
書評掲載日:2021-01-04 07:11:48
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/294424/review/255318/
 

専門外の学術書を読むことは相当大変。でもそれは凝り固まった自分の考え方を更新させるために不可欠な行為という。それは根気と時間と好奇心があればできるそうです。

日々の生活の中で学術書を読むことなんてない。でも、仕事上、仕事内容に関連する書籍を読むことはあり、場合によっては学術書に近いものもある。それは当然のことながら、仕事に関連する分野に偏ることになる。
 それではよくないと著者は言う。偏った分野の書籍ばかりを読むことは思考に偏りを生み、新たに発生した問題解決に大きな阻害となってしまうことに。そこで自分の専門とは異なる分野の学術書の読書が薦められている。…続きを読む

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  1. 365bookdays編集部

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