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monthly bookreview ranking

今月の1位は、認知症老人を囲む、十年間の家族の狂想曲『長いお別れ』(文藝春秋)

本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2022年9月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2022年9月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)

1位
長いお別れ
書籍:長いお別れ
(中島京子/文藝春秋)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:40
書評掲載日:2022-09-07 06:52:59
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/263246/review/280890/

認知症という病気を「長いお別れ」というのだそうだ。

物忘れや失くし物は、以前からそこそこあったのだ。だけど、ある時、東昇平は、行き慣れた場所に辿り着くことができなかった。それが、認知症という病名がはっきりしたきっかけだった。それから十年の間に、徐々に症状は進んでいく。
東昇平と妻の曜子は二人暮らし。三人の娘たちは独立している。それぞれ、生活や仕事があり、忙しい日々を送っている。
老老介護の日々と、親たちを気遣う娘たちと、その周りの家族たちの困惑ぶりや奮闘が描かれる。…続きを読む

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2位
目で見ることばで話をさせて
書籍:目で見ることばで話をさせて
(アン・クレア・レゾット、横山和江/岩波書店)
レビュアー:茜さん 得票数:38
書評掲載日:2022-09-04 11:11:50
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/307025/review/280894/

手話やろう文化への扉を開く、マーサズ・ヴィンヤード島を舞台にした歴史フィクション。

本書は、かつて誰もが手話で話したという実在の島を舞台にしたフィクションです。そう言えば、日本にもそういった地域があったなぁと読みながら思っていたら訳者あとがきにて触れられていました。
本書には手話が主体であるため、工夫がされており手話の部分は<>でくくってあります。声での会話は「 」で、声と同時に手話で話す部分は《 》が使われていますが違和感なくストーリーに没頭できます。…続きを読む

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3位
認知症世界の歩き方
書籍:認知症世界の歩き方
(筧裕介、樋口直美、認知症未来共創ハブほか/ライツ社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:35
書評掲載日:2022-09-07 23:29:57
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/307149/review/281028/

認知症の人は、不思議世界を旅してる

認知症とは、 「認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態」を指します。 認知機能とは、「ある対象を目・耳・鼻・舌・肌などの感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断したり、計算や言語化したり、記憶に留めたりする働き」のことです。 私たちは、成長し、生き続けていくうちに、さまざまなものと接し、周囲で何が起きているのか、それにどう対処すればよいか、少しずつ学習して身に付けていくわけです。ところが、認知症になると、そうした機能が働かなくなり、今まで見えていた世界が何だか奇妙なものになってしまうのです。…続きを読む

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3位
人類対自然 (エクス・リブリス)
書籍:人類対自然 (エクス・リブリス)
(ダイアン・クック、壁谷さくら/白水社)
レビュアー:darklyさん 得票数:35
書評掲載日:2022-09-06 19:39:03
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/305445/review/280987/

不条理な世界にもがき、苦しみ、それでも懸命に生きようとする人たち、その世界は何を意味しているのか。分かり易い話は一つもない。

すべての話に共通するのは、文章は読み易く、難しい表現などほとんどなく、物語性が強いためすぐその世界に入り込めることです。そして、その世界が何を意味しているのか、SF・ファンタジーなのか、それとも何かの暗喩なのか、とても分かりにくいですが、結局は人間というものはどのような存在なのかというのも一貫したテーマであると思います。本書は12の短編がありますが、そのうち2つの短編について紹介したいと思います。…続きを読む

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5位
すべての、白いものたちの
書籍:すべての、白いものたちの
(ハン・ガン/河出書房新社)
レビュアー:三太郎さん 得票数:34
書評掲載日:2022-09-04 10:29:16
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/273693/review/280845/

韓国の作家、ハン・ガンによるワルシャワ滞在記。

このサイトでもレビューを幾つも見た、韓国の作家、韓江(ハン・ガン)の作品。週に1、2回は立ち寄る近所のブックオフで目に止まった。手ごろな厚さだったので手に取った。パラパラめくって気が付いたのは紙の色だ。初めは薄い黄色だったのが段々色が濃くなり、突然純白(というか一見青っぽく見える白)に替わり、最後には薄いピンクがかった白になる。色の変わり目は手触りでも分かる。すべすべからざらざらへ、そしてまたすべすべへ。…続きを読む

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5位
その丘が黄金ならば
書籍:その丘が黄金ならば
(C・パム・ジャン、藤井光/早川書房)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:34
書評掲載日:2022-09-06 06:25:24
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/310708/review/280527/

なにがあれば家は家になるのだろうか。

中国系アメリカ人作家のデビュー長篇だということは知っていたが、タイトルからその内容をうかがい知ることはできなかった。手に取ったのは、訳者が藤井光さんだったから。完全に“訳者読み”だ。
「爸(ちち)が夜に死んでしまい、二人は一ドル銀貨二枚を探すことになる。」
物語はこんな一文で始まり、読み始めてすぐにこれは中国系移民の話なのだと合点する。 …続きを読む

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7位
813
書籍:813
(モーリス・ルブラン/新潮社)
レビュアー:hackerさん 得票数:33
書評掲載日:2022-09-13 08:58:08
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/71029/review/281074/

「わしはアパートを荒し廻って盗むが、あんたは取引所で盗んでいる。つまり似たりよったりだ」 ちょっと違うような気もしますが、ルパンらしい台詞です。

「(わしは)主だ...なんなりと望むことができ、なんなりと成しとげる力を持つ者だ...実力者...。わしの意欲には際限がないが、わしの能力にも際限がない。地球上の最大の富者よりもわしは富んでいる、なぜなら彼の財産がわしの自由になるからだ...。世の中の最強力者よりわしは強力だ、なぜなら彼らの勢力がわしの支配下にあるからだ」
本書中のルパンの台詞ですが、御大層なことを言っているようでも、要するに「私のものは私のもの、あなたのものも私のもの」と言っているわけで、図々しいというか、何というか...まぁ、頭は良くて紳士とはいえ、強盗とはこういうものなのでしょう。…続きを読む

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7位
バレエシューズ
書籍:バレエシューズ
(ノエル・ストレトフィールド/福音館書店)
レビュアー:Wings to flyさん 得票数:33
書評掲載日:2022-09-24 07:13:47
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/274412/review/281638/

愛され見守られる幸福と、夢は叶うという希望を溢れるほどに湛えた、美しい文学。

本書は分類すれば「子どものための文学」ということになるのだが、大人が読んでも子どもが読んでも、その年齢に応じた感動をくれる作品のひとつである。
1930年代のロンドン、クロムウェル通りのいちばん奥の家に三人の姉妹が住んでいた。姉妹と言っても彼女たちは、化石収集家の学者先生が旅の途中で集めてきた、身寄りの縁薄い子どもたちなのだ。学者先生の親戚のシルヴィアと乳母のナナに可愛がられてすくすく育つのだが、先生は5年分の生活費を残して旅に出たまま帰ってこない。彼女たちは、段々と苦しくなる家計を助けるために、それぞれの立場で行動を開始する。…続きを読む

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7位
文にあたる
書籍:文にあたる
(牟田都子/亜紀書房)
レビュアー:休蔵さん 得票数:33
書評掲載日:2022-09-12 09:45:35
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/310272/review/280712/

「本を読むことを仕事にしています」という文章からはじまる本書。本を読むことを仕事にするのは、なかなかハードそうです。

校正って誤字、脱字をチェックすることだと思っていました。無知すぎて恥ずかしい!
 本書はフリーの校正者が著した校正業界の実情本…というより本人の経験談だから、それぞれなのかも。でも、1人の校正者の目から見た校正業界、出版業界の様子を垣間見ることができる。…続きを読む

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10位
1984
書籍:1984
(ジョージ・オーウェル、田内志文/KADOKAWA)
レビュアー:DBさん 得票数:32
書評掲載日:2022-09-13 21:41:35
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/309554/review/281181/

全体主義の中での個人の話

初のジョージ・オーウェルです。 ハルキの「1Q84」を読んでオーウェルのもじりかと思ったが、実際に読んでみたら確かにどちらもディストピアという意味では通じるものがあった。 終戦直後に書かれた本作は冷戦時代に人気を博したそうですが、書かれて半世紀以上たち幸いにもオーウェルの予測した世界よりは少しマシな時代である今読んでも十分楽しめる。…続きを読む

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10位
悪の教典 上
書籍:悪の教典 上
(貴志祐介/文藝春秋)
レビュアー:ことなみさん 得票数:32
書評掲載日:2022-09-05 22:21:43
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/202814/review/280949/

蓮実という青年が主人公。IQが高く、外見もいい。だが彼には冷徹な裏の顔がある。 彼が私立高校に赴任して起きる(起こす)事件。一時話題になって今はもう読まれてないような掘り起こし本。上下巻。

上巻を読んで時間が空いて前の話を忘れているのではないかと思ったが、下巻で繰り返す部分もあって繋がりには余り苦労しなかった。
高校教師になる前はアメリカで商社勤務の経験があるが、不正が発覚して入国不可になり、戻ってきた。ネイティブな英語が話せるうえ、犯罪がらみで心理学も独学ながら研究し、生徒の心をいともやすやすとつかんでしまった。悪という感覚が欠如して生まれ、全く他人の痛みを実感することがない。こういう人格がソシオパスだろうか。…続きを読む

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  1. 365bookdays編集部

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