【作家を読む】「二つとない物語」を紡ぐ情熱 ノンフィクション作家 川内有緒
31歳のとき、フランスの国連機関に2000倍もの倍率を突破して合格。勤務先のパリで出会った日本人たちの生き様に触発され、38歳でノンフィクション作家を志した川内有緒(かわうち・ありお)さん。その作品は、丹念な取材を言葉として綴ったノンフィクションでありながら、読むと思わず笑みがこぼれる、じんわりと心があったかくなる、そんな取材対象に寄り添う愛ある文章で支持を集めています。
2018年には『空をゆく巨人』で開高健ノンフィクション賞を受賞、ノンフィクション作家としてのキャリアを着実に重ねている川内さんを知る、おすすめ5選をご紹介します。
1972年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、フリーのライターとして評伝、旅行記、エッセイなどを執筆。その傍ら小さなギャラリーも運営。著書に『空をゆく巨人』(第16回開高健ノンフィクション賞)『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(第33回新田次郎文学賞)、『パリでメシを食う。』、『パリの国連で夢を食う。』、『晴れたら空に骨まいて』など。
テーマは現代美術。第16回開高健ノンフィクション賞受賞
書籍:『空をゆく巨人』
(川内有緒/集英社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/272676/
この本を読んで川内ファンになったのはかくいう私です。パリの日本人10人を取材したデビュー作
書籍:『パリでメシを食う。』
(川内有緒/幻冬舎)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/50212/
死と生はひとつづきのもの。想いをつなげ、大切な人を葬った5組の物語
書籍:『晴れたら空に骨まいて』
(川内有緒/ポプラ社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/284143/
著者の胆力が垣間見れる。国連で働いた日々を綴ったエッセイ
書籍:『パリの国連で夢を食う。』
(川内有緒/幻冬舎)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/284144/
「放浪の吟遊詩人」バウルを探しに出かけて見つけたものとは。第33回新田次郎文学賞受賞作
書籍:『バウルの歌を探しに バングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録』
(川内有緒/幻冬舎)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/265448/
終わりに
物事をあるがまま受け止め、取材対象の言葉を深く咀嚼していくスタイルは、どこかユニセックスな雰囲気を纏っています。 (注:川内有緒さんは女性です)
文章に触れると、一人の人生、経験を「二つとない物語」として紡ぐ、根気と情熱に驚かされます。 非常によく練られた文章であるはずなのに、言葉の鮮度がその彩りや温度を保ったままであるために、その人の経験を追体験するような錯覚を覚えます。しなやかで、愛ある目線が心地よいものとして心に残ります。 ぜひ手を伸ばしてみてください。