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【作家を読む】川越宗一さんインタビュー 直木賞受賞作『熱源』はどうやって生まれたか

デビュー作『天地に燦たり』で松本清張賞受賞、2作目の『熱源』で第162回直木賞を受賞。『熱源』は2020年本屋大賞にもノミネートされるなどいま注目の作家・川越宗一さん。

今まで発表された作品はどちらも骨太な歴史小説です。1作目の『天地に燦たり』では、豊臣秀吉政権時の文禄・慶長の役(朝鮮出兵)を描き、2作目の『熱源』では日本・ロシア・ヨーロッパを舞台にして、19世紀末~20世紀前半という激動の時代に翻弄された樺太アイヌの少年ヤヨマネクフとポーランド人の青年ブロニスワフ・ピウスツキの二人の主人公を描きました。

編集部の和氣も『熱源』を読みましたが、重厚で読み応えがあり、樺太アイヌやポーランドの歴史に興味を持たせられる作品でした。著者の川越宗一さんはいったいどんな考えでこの物語を書かれたのでしょうか?

本作のことを中心に、直木賞受賞や影響を受けた作品についてもお聞きしました。

なぜか北海道にあったポーランド人の胸像

編集部 直⽊賞受賞、おめでとうございます。受賞から約1か⽉経ち、2020年本屋⼤賞にもノミネートされました。受賞以降、ご⾃⾝や周囲に変化はありましたか?

川越(以下、敬称略) ぼく自身の内面は変化ないのですが、しばらくはエッセイ執筆や取材、書店さん回りや受賞以前に決まっていた取材旅行があり、楽しくも忙しく過ごしていました。周囲からはお祝いの品や言葉をたくさんいただいたので、うれしかったです。

編集部 「樺太アイヌ」をテーマにして、⼩説を書いたきっかけを教えてください。

川越 「樺太アイヌ」はテーマというより、書きたかった人物の特徴の一つなのですが、小説を書いたきっかけは夫婦で行った北海道旅行です。途中にアイヌ民族博物館に立ち寄りました。そこにブロニスワフ・ピウスツキの胸像があり、「なぜ遠くのポーランド人の像が北海道に?」と興味を持ったのが、着想のきっかけです。彼を調べるうちに、南極探検隊に参加したヤヨマネクフ(山辺安之助)とサハリンで出会っていたことを知り、その二人の壮大な人生が交錯する物語を書きたいと思うようになりました。

編集部 「樺太アイヌ」というテーマを描くのに苦労された点や注意された点など執筆時のエピソードをお聞かせいただければと思います。

川越 少数民族のキャラクター全般を通じて、「文明人が忘れた人間の真理を彼らが保っている」というようなオリエンタリズムをもって書くことは注意深く避けました。

編集部 登場⼈物たちには史実の⼈物が多数いますが、架空の⼈物も数⼈います。すべて史実、あるいはすべて架空の話にしなかった理由はあるのでしょうか。

川越 「史実をもとにしたフィクション」だからです。巻末の参考文献をご覧になったり、登場人物の名前を元にさまざまな記録を調べるなど、史実そのものに興味をもっていただけることがもしあれば、フィクションを書いた人間としてはとても光栄なことだと思っています。

編集部 あるいは、史実・架空のバランスで配慮した点を教えてください。

川越 フィクションを作った立場で申すのは野暮と思いますので、回答は避けさせてください。

編集部 「史実」の⼈物に基づいた、樺太アイヌのヤヨマネクフ。医術や教育の普及も考えた現代的な視野をもったアイヌです。彼の⼈物像を作り上げるときに考えたこと、参考にしたことがあれば教えてください。また、暴⼒では真の⾰命は成しえないと考えるブロニスワフもまた、⾮常に現代的な視野を持つ⼈物像です。彼のパーソナリティを作り上げるにあたり、考えたこと、あるいは参考にされたことは何でしたか。

川越 両人とも当人の事績をいちばん参考にしています。

編集部 物語では往々にして過度期の「科学」と「国家・政治」、あるいはその未成熟さが描かれ、登場⼈物たちを翻弄します。細やかな描写にも驚かされます。その関⼼は何に基づいているのでしょうか。

川越 自分でもわからないので他人事のように申しますが、21世紀現在に存在している課題への私の関心が、基になっているように思います。

編集部 ご⾃⾝に影響を与えた作品(本・映画・⾳楽)について教えてください。

川越 吉川英治の『三国志』、『銀河英雄伝説』、『機動警察パトレイバー』、『炎立つ』(小説もドラマも)、爆風スランプなどは、なにがどこに、という区別がつかないほど雑多かつ強く、ぼくの作品に影響していると思います。また『王立宇宙軍 オネアミスの翼』というアニメ映画があるのですが、まったくの空想でエキゾチックな異世界を作り出していてとても面白く、ぼくがこれまで書いた小説に共通する「異なる文化のあわい」というテーマ設定に直接影響しています。

編集部 『天地に燦たり』『熱源』と⻑⼤な歴史⼩説を書かれています。次回作はどのようなテーマを想定されていますか︖

川越 日本人の母を持つ鄭成功という中国の英雄を中心に、17世紀の中国の動乱を描く作品を執筆中です。

編集部 発表が楽しみです。ありがとうございました。

***

次回作がとても楽しみですね。もし本作を読んだ方は感想を本が好き!へ投稿してみてください。会員登録はこちらから。

関連作品

書籍:熱源
川越宗一 /文藝春秋)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/285248/

彼らが感じる「熱さ」とは?(ぷるーとさんさん)
生きるための熱の源は、人だ。(雅也-カヤ-さん)

 

書籍:天地に燦たり
(川越宗一 / 文藝春秋)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/269614/

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