【作家を読む】道なきところに道を切り拓く ノンフィクションライター 近藤雄生
2019年の「Yahoo!ニュース 本屋大賞ノンフィクション本大賞」にノミネートされた『吃音: 伝えられないもどかしさ』の著者、近藤雄生(こんどう・ゆうき)さん。
自身も吃音の悩みを抱えていた経験から、言いたいことが伝えられない、という生きづらさに向かい合ったノンフィクションだ。
現在、ノンフィクションライターを生業としている近藤さんだが、東大大学院を修了後、就職せず、ライターを志して海外へ。5年半の旅を経て帰国。一見、突拍子もない選択のようだが
その経歴を著作で追ってみると、吃音が人生における大きな決断に影響している。
悩みを抱えながら、自分にできることはなにか?を切り拓いていく真っすぐさ。力まず、ライターとして自立した近藤さんを知る、おすすめ本をご紹介します。
1976年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修了。2003年、自身の吃音をきっかけの一つとして、結婚直後に妻とともに日本を発つ。オーストラリア、東南アジア、中国、ユーラシア大陸で、約5年半の間、旅・定住を繰り返しながら月刊誌や週刊誌にルポルタージュなどを寄稿。2008年に帰国。大谷大学/京都造形芸術大学非常勤講師、理系ライター集団「チーム・パスカル」メンバー。著書に『旅に出よう』(岩波ジュニア新書)『遊牧夫婦』シリーズ(ミシマ社、角川文庫)『吃音 伝えられないもどかしさ』(新潮社)、『オオカミと野生のイヌ』(エクスナレッジ)など。がある。
公式ホームページ
https://www.yukikondo.jp/
「Yahoo!ニュース | 本屋大賞ノンフィクション本大賞」にノミネートされた渾身のノンフィクション
書籍:『吃音: 伝えられないもどかしさ』
(近藤雄生 / 新潮社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/276735/
原点は旅
著者デビュー作が大幅改訂して文庫化!
書籍:『遊牧夫婦 はじまりの日々』
(近藤雄生 / KADOKAWA)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/284511/
内容:住んで、学んで、働いて。5年間、実現してきた夫婦の最初の1年の記録。 「旅の中を生き続けたい。そう思い、結婚直後に仕事はないまま、ぼくらは二人で旅に出た。」ライターを志す20代の「ぼく」は、日本での新婚生活を経験せずに、妻モトコとあてのない旅に出た。思いもつかない二人の「夫婦」と「旅」の形とは? オーストラリアでの半年間のイルカのボランティア、アマガエル色のバンで果てしないドライブ、独立2周年の東ティモール、インドネシア……。5年に及んだ夫婦の旅の1年目の記録。
世界にはいろんな生き方があふれている
書籍:『旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる』
(近藤雄生 / 岩波書店)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/73741/
内容:もっと自分らしく自由に生きてみたい! 生き方はいろいろあっていいはずだと海外に旅立った著者は、5年以上におよぶ旅で何を感じたのか?夢を追い続ける人、自分の道を切り開こうとする人、どうにもならない大きな力によって人生を動かされている人…、各地で出会った様々な人の姿を通して、自分らしく生きるための道を探る。
理系ライターとして足場
読む動物図鑑シリーズ
書籍:『オオカミと野生のイヌ』
(近藤雄生,澤井聖一 / エクスナレッジ)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/284512/
内容:オオカミに一番近いイヌは柴犬! オオカミとクマが恋人に! オオカミと野生イヌの新事実を収録した必読の本。 自然と共に生きる彼らの生態から知られざる一面まで、全編書き下ろしで詳細に紹介。
ライターとしての強みをもつ
書籍:『職業としての理系ライター(パスカルブックス)』
(理系ライター集団 チームパスカル編著)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/284514/
内容: 理系各方面のライティングの仕事を受けている理系ライター集団「チーム・パスカル」。メンバーそれぞれが、理系ライターになった経緯や理系ライターという仕事について書き下ろし、一冊の電子書籍としてまとめました。
最後に
近藤さんは吃音が原因で、電話をかけたり、自分の名前が言えないという悩みがあり、「会社勤めはできない」とフリーランスライターの仕事を選んだといいます。いきなり海外へ飛び出し、世界の様々な場所に身を置くことを通じて経験したこと。それが表現というフィールドで活躍する上での確かな土台になっている。
本を出し、名前が認知されるまでの道のりは平坦どころか、予想外な事態の連続。それでも、近藤さんの言葉からは状況を客観視しつつも、決して悲観していない姿勢、自然体でいる朗らかさが感じられます。行動は大胆ながらも、「道なきところに道を切り拓いていく」逞しさが、読み手の心をつかみます。
大学を出て、就職して大きな会社に勤めて、というロールモデルに未来を見いだせない。そんな働く世代に手に取ってもらいたい作品です。自分なりに物事を捉えるものさしが見つかるかもしれません。