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【作家を読む】ロシア・東欧文学研究者・文芸評論家 沼野充義 おすすめ5選

2019年10月10日にノーベル文学賞が発表されました。2018年、2019年と2年分の受賞者発表で、2018年の受賞者がポーランド人作家、オルガ・トカルチュクさんであることから、東欧文学に注目が集まっています。 今回、ご紹介するのは、東大教授でロシア・ポーランド文学の研究者で翻訳家、ロシア・東欧文化全般に造詣が深い、沼野充義さんの著作・訳書です。国内、外の文学に幅広い知識をもち、文芸評論家としても活躍されている沼野さんの仕事を通じて、ロシア、ポーランドの作家・詩人に触れてみてください。

 

沼野充義さんプロフィール

1954年東京生まれ。東京大学卒、ハーバード大学スラヴ語学文学科に学ぶ。東京大学教授。専門はロシア・東欧文学。文芸批評家としても活躍する。 著書に『屋根の上のバイリンガル』(白水社)、『ユートピアへの手紙』(河出書房新社)、訳書に『賜物』(河出書房新社)、『ナボコフ全短篇』(共訳、作品社)、スタニスワフ・レム『ソラリス』(国書刊行会)、シンボルスカ『終わりと始まり』(未知谷)などがある。

 

沼野教授が最前線で活躍する作家・翻訳家と対談した文学ガイド

8歳から80歳までの世界文学入門

書籍:8歳から80歳までの世界文学入門
(沼野充義,池澤夏樹,小川洋子,青山南,岸本佐知子/光文社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/241170/ 

この広い世界には、実に多様な面白い文学が山ほどあるってことは、わざわざ教えて貰わなくてもよく知っている!と思いつつ、ちょっとだけ覗いてみるか……とページをめくったのが運の尽き?!(かもめ通信さん)

 

チェーホフの4大劇のひとつを、わかりやすい翻訳と解説で

かもめ

書籍:かもめ
(チェーホフ, 沼野充義 (翻訳)/集英社文庫)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/203283/  

チェーホフ先生は、本書を「喜劇」と称してはばからない。 読み終えても、自分にはこれがどうして「喜劇」なのかよくわからなかったのだが、本書「かもめ」の新訳にあたったという沼野氏の解説に 「多くの登場人物の間で意志の疎通がうまくいっておらず、互いにどこまで相手の気持ちがわかっているのか、観衆にもよくわからないような書き方になっている」 とあってようやく合点がいく。 彼らの思いが連鎖していくにつれて、何か少しづつ少しづつずれていく感じがたまらないのだ。(よみかさん)

 

ポーランド人作家・スタニスワフ・レム研究の第一人者

ソラリス (ハヤカワ文庫SF)

書籍:ソラリス (ハヤカワ文庫SF)
(スタニスワフ・レム,沼野充義(翻訳)/早川書房)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/226124/  

しかしこれはSFの中でも、ちょっと手強いかも。  恐怖やスリル、あるいは愛を散りばめたストーリーと並行して、認識や思考、生命そのものについて考える欲求も沸いてくる。  二度目にはこんなに緊張しないかもしれないが、一度では分かり切れはしない奥深さ。(マーブルさん)
沼野充義訳の『ソラリス』と飯田訳の『ソラリスの陽のもとに』との違いについては沼野自身による解説に詳しいが、大きくは飯田訳が、スタニスワフ・レムの原作のロシア語訳版からの重訳だったのに対して、沼野訳はポーランド語の原作から直接訳したものであること。これによって、ロシア語訳される際に検閲で削られた部分の影響を受けない完全な形で、日本語で読めるようになった。(そうきゅうどうさん)

 

賜物 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)

書籍:賜物 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)
(ウラジーミル・ナボコフ,沼野充義(翻訳)/ 河出書房新社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/20052/  

ナボコフはこの小説のヒロインは「ジーナではなくロシア文学である」と言っていたという。 なるほど「物語」であると同時に「文学批評」にもなっていて、プーシキン、ゴーゴリ、トゥルゲーネフ、ドストエフスキー、トルストイといったなみいるロシア文学の巨匠たちはもちろん、この作品を通じて私がはじめて耳にしたロシア人作家たちへの言及も興味深い。(かもめ通信さん)
知識不足は沼野充義氏の詳細な訳注を頼りにし、また、だんだんと読み進めていくにつれ、ナボコフの文章のリズムにも慣れてくると、ナボコフという小説家の面白さ、複雑さに引きこまれていく。(hamachobiさん)

 

ノーベル文学賞受賞者のポーランド詩人・ヴィスワヴァ・シンボルスカ

終わりと始まり

書籍:終わりと始まり
(ヴィスワヴァ・シンボルスカ,沼野充義(翻訳)/ 未知谷)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/69606/  

やさしい言葉は曖昧を許さない。やさしい言葉は小難しい言葉より強い。
たとえ、これらの詩が書かれた背景を知らなくても、
(ポーランドという国の歴史を知らなくても、シンボルスカの人生を知らなくても、見える風景を知らなくても、そこで何が起こっているか知らなくても) 今現在、どこか別の場所にいる誰かの心に沁み入っていく。
この詩集は、味わう、というより、拠って立つ、という言葉のほうが相応しいような気がします。(ぱせりさん)
喜びも悲しみも、怒りも希望も。声に出して読みたい。静かに、力強く。
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またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春を責めたりはしない
         《眺めとの別れ》より
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18篇の詩のあとに、ノーベル文学賞受賞時の記念講演の内容が収録されていて、 こちらもとてもすばらしい。(かもめ通信さん)

 

《新刊情報》2019年10月刊行。ロシア文学の“恐怖”アンソロジー

ロシア怪談集

書籍:ロシア怪談集
(沼野充義(編) / 河出書房新社)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/281957/  
内容:夜ごと棺から起き上がる女と神学生の闘いを描くゴーゴリの名作ほか、ドストエフスキー、チェーホフ、ナボコフら文豪が描き出す恐怖!

 

沼野充義さんの携わられる本は、文学者としての目、翻訳者としての目、作家としての目、文芸評論家としての目、さまざまな目を通すことで、文学の奥深さと広がりを教えてくれています。ポーランド語やロシア語の原文から、知性と知識、文学への情熱を総動員して編まれた書籍によって、私たちは遠い国の文学や詩、古典、現代文学に触れることができます。日本の読者としてなんと幸福なことでしょうか。

 

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